肺におけるガス交換

空気は口腔や鼻腔から入り、最終的に肺に到達する。

 空気の中に含まれる酸素は全身の組織へ届き、全身の組織から排出された二酸化炭素は肺から口腔や鼻腔を通じて外に出る。

 このメカニズムを外呼吸やガス交換と言う。

 それではガス交換はどのようなメカニズムで行われているのだろうか?

 肺胞内の酸素は肺胞内を取り囲んでいる毛細血管へ移動するが、この移動は物理現象である濃度勾配を利用した拡散現象により生じている。

 つまり、酸素分圧の差を利用して受動的に移動している

 拡散は、物質の濃度が均一になろうとして、濃度が濃い方から薄い方へ移動する現象である。

 つまり、濃度勾配により酸素は、「肺胞から毛細血管へ」、二酸化炭素は「毛細血管から肺胞へ」移動することになる。

 酸素が拡散するには他にも重要な因子がある。

 それは、膜透過性拡散面積である。

肺胞と毛細血管の間にある細胞膜を酸素が通過するが、細胞膜に水や粉塵などがある場合には、透過性が低下する。

 ただ、二酸化炭素に関しては水成分に容易に溶け込むことができるため、毛細血管から肺胞への移動可能である。

 肺に水が貯留している場合は、酸素は血液に溶け込みにくいが、二酸化炭素は血液から肺胞へ移動し、体外へ排出することができる。

 肺炎や心不全などで肺胞に水成分(血液)が貯留している場合やアスベストなどの粉塵が肺胞に付着している場合は、酸素が細胞膜を通過することができないため、ガス交換が困難となる。

 二酸化炭素は粉塵などの化学物質は通過することができない特徴を持つ。

 よって、アスベストなどが原因のじん肺などは低酸素血症だけでなく、高二酸化炭素血症にもなるため重篤化しやすい。

 さらに、気管支が痰やがん細胞などで閉塞された場合、酸素が一部の肺胞に到達しなくなるため、酸素が毛細血管に触れる面積(拡散面積)が低下することになる。

 臨床ではガス交換のメカニズムを利用して以下の治療法を行うことが多い。

酸素吸入による高濃度酸素を肺に入流させることでガス交換を促す。
●肺の中の水成分、痰などを減少させることでガス交換を促す。

 これらの治療法はそれぞれさらに複雑な理論があるが、まずはガス交換のメカニズムについて理解することが大切である。

投稿者
高木綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授

過去に3つの鍼灸院の経営や運営に携わり、鍼灸師によるリハビリテーションサービスを展開していた。また、デーサービスも立ち上げ、鍼灸師・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師による機能訓練やリハビリテーションを利用者に提供していた。鍼灸師・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師の方々への教育や指導経験が豊富である。現在も、全国各地でリハビリテーションに関するセミナー講師として活動している。

鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師・柔道整復師向けセミナー

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