呼吸リハビリにおけるパルスオキシメーターの評価

新型コロナウイルスの蔓延によりパルスオキシメーターの認知度は高まった。

パルスオキシメーターとは皮膚を通して動脈血酸素飽和度(SpO2)脈拍数を測定するための装置でプローブを指にはさむことで測定する。

 パルスオキシメーターの利点は、苦痛を伴わず、継続的に患者の動脈血酸素飽和度を測定できることである。

 パルスオキシメーターで測定される数値は動脈血酸素飽和度の推測値として有効である。

           

 例えば、パルスオキシメーターの90%は動脈血酸素飽和度の60Torrに相当する。

 60Torr以下は低酸素血症の診断基準の一つであり、身体が酸素欠乏状態となっていると言える。

 呼吸器疾患(COPD、喘息、肺炎)が進行し、低酸素血症が長時間継続すると呼吸困難の自覚のないまま呼吸状態が悪化する「幸せな低酸素血症」“happy hypoxia”という状態が起こることが知られている。

 低酸素状態になると、多幸感が生じることが報告されている。

 多幸感に陥ったことにより正確な判断がつかなくなり、低酸素血症の自覚症状の認識が遅れると言われている。

 低酸素血症の自覚が乏しくなる原因は加齢や自律神経障害により呼吸調節を行う調節機能が低下していることや低酸素を感知する頸動脈小体のウイルス感染などが考えられる。

 そのため、継続的に簡易に利用できるパルスオキシメーターの評価は急性増悪の察知には非常に有効と言われる。

 新型コロナウイルス感染症でもパルスオキシメーターが注目されたが、これは「幸せな低酸素血症」の予防するために大変有用な測定機器であるからである。

 ただ、パルスオキシメーターにも欠点があり、二酸化炭素分圧や酸塩基平衡の情報は得られない。

 特に、二酸化炭素分圧の上昇は重篤な状態の指標であることから、動脈血ガスの評価が必要となる。

 リハビリテーションの現場ではパルスオキシメーターの利点と欠点を理解した上で利用することが重要である。

投稿者
高木綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授

過去に3つの鍼灸院の経営や運営に携わり、鍼灸師によるリハビリテーションサービスを展開していた。また、デーサービスも立ち上げ、鍼灸師・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師による機能訓練やリハビリテーションを利用者に提供していた。鍼灸師・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師の方々への教育や指導経験が豊富である。現在も、全国各地でリハビリテーションに関するセミナー講師として活動している。

鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師・柔道整復師向けセミナー

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