純粋な股関節屈曲とは??

日本整形外科学会・日本リハビリテーション医学会の定める股関節屈曲の参考可動域は125°と表記されている。

しかし、解剖学的に股関節屈曲をみると、実は屈曲90°付近で大腿骨頚部と寛骨臼の臼蓋が衝突する。
すなわち、骨の構造上それ以上の屈曲は困難であるため、純粋な股関節屈曲は90°までである。

それでは、股関節屈曲90°以降はどのような現象が起きているかというと、骨盤の後傾(腰椎の屈曲も伴う)が生じるのである。

この骨盤の後傾が股関節屈曲と同時に起きているため、外見上において股関節屈曲は125°まで可能ということになっている。

したがって、臨床においては純粋な股関節屈曲と骨盤の後傾を視診と触診、ハンドリングの技術にて見極める必要がある。

ここで腰痛の患者を思い出してみてほしい。

臨床でみられるケースとして、股関節が屈曲90°までいっていないにもかかわらず、早期に骨盤後傾や腰椎屈曲が起こるパターンの患者がいる。

また逆に、股関節が屈曲90°までいっても骨盤後傾・腰椎屈曲が出ないパターンの患者がいる。

両者ともに腰痛を訴えることが多いと思われるが、どちらかのパターンで腰痛が生じているかを評価した上で治療を実施する方が良いと考える。

すなわち、腰痛の訴えがあるからと言って、単純に腰部のマッサージやストレッチングだけをするといったことはあまりよくない。

上記した前者のパターンであれば、股関節の関節可動域練習をしっかりと実施する、後者のパターンであれば腰椎骨盤リズムをしっかりと促す治療をすることが腰痛の軽減に繋がるであろう。

鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師・柔道整復師の先生方においても、しっかりと患者の運動パターンを観察して、観察から得られた評価に基づいて治療に当たっていただけると幸いである。

投稿者
井上拓也

・理学療法士
・認定理学療法士(循環)
・3学会合同呼吸療法認定士
・心臓リハビリテーション指導
・サルコペニア・フレイル指導士

理学療法士免許を取得後、総合病院にて運動器疾患や中枢神経疾患、訪問リハビリテーション等に関わってきました。すべての患者さんのために、障害された機能の改善やADLの向上に励んできました。特に運動器疾患においては、痛みの改善や関節可動域の改善、筋力向上を目的とした理学療法にて、患者さんのADLの向上を図ってきました。

今までの経験を活かして、皆様のお役に立てるように励んで参ります。

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