
鍼灸師・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師の方々の臨床において、下肢疾患を呈している患者様を担当した際、足関節に対してアプローチを行うことは多いのではないだろうか。
今回は足関節に対してアプローチを行う際には必須の知識である距骨下関節の構造と運動学について述べる。
距骨下関節は、踵骨と距骨により構成される1組の関節構造である。
距骨下関節の動きの範囲を評価する方法としては非荷重下で踵骨をしっかりと握り、左右に回転させ評価を行う。
距骨下関節を徒手にて動かす時際、距骨は距腿関節の中で固定されたままであり踵骨で起こる非荷重下での回内・回外運動は固定された距骨に対して踵骨が動くことで生じる。
しかし、歩行などの運動では、踵骨が荷重下で比較的固定されている状態での動きとなり、踵骨上での下腿と距骨の回転運動を伴う複雑な運動となる。
この距骨下関節の回内外の動きにより、足部は踵骨上の足関節と下腿の向きとは関係なく、足底を地面に接地する事が可能となる。
歩行時の衝撃吸収、不整地に足の形を適応させる、揺れるボートの上でバランスを保つ際には距骨下関節の回内外の動きと、横足根関節での回内外の動きがとても重要になる。
次に運動学について述べる。
距骨下関節での関節包内運動には、踵骨と距骨の間の3組の関節面(前・中・後)間の滑り運動が生じる。
この運動の回転軸は踵の外後方を貫き、距骨下関節を通り、前方、内側と上方の方向へ走るとされている。
この回転軸の傾きによって、足関節、足部の回内・回外の主要な3つの構成要素のうちの2つ(内がえしと外がえし,外転と内転)が距骨下関節を中心に行われる。
簡単にまとめると、距骨下関節での骨運動は、固定されて動かない距骨に対する踵骨の回転運動である。しかし歩行中は踵骨が体重負荷によって固定される時に距骨下関節での回内と回外が距骨と下腿の回転によって起こる。
距骨下関節に対して評価・治療を行う際、上記の様な関節の構造・運動学をイメージしながら行うことが重要であると考える
投稿者
堀田一希
・理学療法士
理学療法士免許取得後、整形外科クリニックにて運動器疾患を中心に携わっています。
臨床では多くの患者さんの主訴が"痛み"であり、痛みを改善するために理学療法士としての基礎である解剖学・生理学・運動学を中心に評価・治療を行なっています。
今までの経験を活かして、皆様のお役に立てるように励んで参ります。