鍼灸師・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師の方々の臨床において、下肢疾患を呈している患者様を担当した際、足関節背屈可動域制限に対してアプローチすることは多いのではないのだろうか。 

今回は足関節背屈・底屈の評価・治療を行う際に必要な距腿関節の関節構造と運動学について述べる。 

・関節の構造

距腿関節は内果と外果、脛骨の遠位端によって形成された四角の腔所と距骨側面および滑車面との間の連結によって形成される。

距腿関節は薄い関節包で包まれており、関節包外では四角の腔所の中で距骨が過剰に内がえしや外がえしをして傾斜しないように側副靭帯が補強している。

距腿関節の内側側副靭帯は三角靭帯と呼ばれ、距腿関節、距骨下関節、距舟関節による外がえしを制限している。

外側側副靭帯は前距腓靭帯、踵腓靭帯、後距腓靭帯により構成され距腿関節と距骨下関節の内がえしを制限している。

まとめると、足関節の内側・外側側副靭帯は、これらの靭帯が付着している関節の過剰な内がえしと外がえしを制限している。

 次に運動学について述べる。

距腿関節は運動自由度1を持つ。

触診によっても確かめられるように、外果は内果よりも下方かつ後方に位置するために、回転軸は純粋な内外側軸からわずかにずれる。

下記の図のように回転軸(赤)は距骨の外側から内側へ両果を通り抜けるために軸は上前方にわずかに傾く。

回転軸のために背屈ではわずかの外転と外がえしを伴い、底屈ではわずかな内転と内がえしを伴う。

次に距腿関節の背屈、底屈の関節包内運動について述べる。

背屈の間、距骨の上面は下腿に対して前方に転がり、同時に後方に滑る。

同時に起こる後方への滑りは、距骨を前方に大きく並進させることなく前方に回転させることが出来る。

底屈の場合は距骨の上面が後方に転がり、同時に前方に滑る。

一般的に、距骨の前方並進に対して緊張を高める全ての側副靭帯は、完全底屈でも強く緊張する。また底屈は背屈筋群と前部関節包を伸張する。

足関節背屈・底屈の評価を行う際、上記の様な関節の構造、関節運動時の関節包内運動をイメージしながら行う事が重要であると考える。

投稿者
堀田一希

・理学療法士
理学療法士免許取得後、整形外科クリニックにて運動器疾患を中心に携わっています。
臨床では多くの患者さんの主訴が"痛み"であり、痛みを改善するために理学療法士としての基礎である解剖学・生理学・運動学を中心に評価・治療を行なっています。
今までの経験を活かして、皆様のお役に立てるように励んで参ります。

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