膝蓋骨の動き

鍼灸師・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師の方々の中で「膝が曲がらない」「膝が伸びない」といった“膝関節”疾患の患者さんを担当する事は多いのではないかと思う。 

今回は膝関節の屈曲、伸展について考えてみる。 

膝関節の屈曲・伸展の運動は、PF関節(大腿骨と膝蓋骨の関節)とFT関節(大腿骨と脛骨の関節)の二つの関節によって行われる。

 今回の記事ではPF関節について述べる。 

PF関節の基礎

膝蓋骨には上下の動きの他に

Frontal rotation→(前額面上の外旋、内旋の動き)

Coronary rotation→(水平面上の内側傾斜、外側傾斜の動き)

Glide→(水平面上の左右の動き)

Tilt→(矢状面での前・後傾の動き)

の4つの動きがあると言われている。

この中でも特に私が普段臨床で着目しているのは、上下の動きとFrontal rotationCoronary rotationである。

 ・膝蓋骨の可動性と評価

膝関節屈曲時にはFT関節(大腿脛骨関節)の屈曲と内旋の動きに伴い、膝蓋骨は下方への移動、外旋、内側傾斜の動きが生じながら大腿骨に対して滑ると言われている。

FT関節の動きに伴って膝蓋骨も動く要因としては、様々な要因があり、大腿骨の形状、膝蓋靭帯、内外側膝蓋支帯などの膝周囲の支帯や靭帯、また大腿四頭筋、大腿筋膜張筋などの膝周囲にある筋肉など、膝関節周囲にある組織全般が関与していると考える。

FT関節とPF関節両者の動きには同じ筋、靭帯や支帯などが関与しているために、F T関節に動きが生じるとPF関節の動きも生じていると考える。

具体的な例を用いて少し説明する。

TKA術後で膝の屈曲可動域制限を呈している患者様などでは膝蓋上嚢、大腿筋膜張筋、腸脛靭帯などの柔軟性が低下していることがある。

膝蓋上嚢、大腿筋膜張筋、腸脛靭帯の柔軟性低下によって膝関節屈曲時の膝蓋骨の下方、外旋、内側傾斜の動きが阻害されてしまう。

そのことによってFT関節での屈曲、内旋の動きも生じる事ができず、膝関節屈曲可動域が制限されてしまう。 

膝蓋骨の可動性の評価として膝関節完全伸展位では、膝蓋骨の関節面は大腿骨と接触していないため膝蓋骨の可動性は最大となる。

そのため完全伸展位で膝蓋骨の全運動方向を徒手にて動かし、制限のある動きを評価する。

膝蓋大腿関節における屈曲・伸展の可動域制限の制限因子を以下の図に示す。

膝蓋大腿関節の可動性を獲得するにはこれらの柔軟性を獲得する事が重要となる。

投稿者
堀田一希

・理学療法士
理学療法士免許取得後、整形外科クリニックにて運動器疾患を中心に携わっています。
臨床では多くの患者さんの主訴が"痛み"であり、痛みを改善するために理学療法士としての基礎である解剖学・生理学・運動学を中心に評価・治療を行なっています。
今までの経験を活かして、皆様のお役に立てるように励んで参ります。

 

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