
鍼灸師・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師の方々が担当する患者さんの主訴で最も多いのは「疼痛」ではないかと思う。
「疼痛」は近年たくさん研究が行われており、疼痛の分類の一つに体性痛がある。
体性痛とはどのようなものだろうか?
体性痛とは皮膚・骨・関節・筋肉・結合組織といった体性組織への機械的刺激が原因で発生する痛みであり、この機械的なストレスを軽減する事ができれば疼痛が軽減する事ができる。
ではどのように機械的なストレスを軽減させれば良いのか?
その答えの一つとして私は解剖学・運動学の知識は機械的ストレスを軽減させる事が重要だと考えている。
正常な関節運動を知っていないと、機械的なストレスがどこに、そしてどのように加わっているかを評価できないし、治療することも出来ないからである。
今回は、足関節背屈運動について考えてみる。
皆さんご存知であると思うが、「足関節」というのは広義の意味であり、これから述べる足関節は狭義の「距腿関節」である。
そして背屈を作るのはこの距腿関節が主である。
・距腿関節
距腿関節は距骨滑車と果間関節窩で構成されているらせん関節であり、距骨滑車の幅は、後方よりも前方が5mm広い。
そのため、底屈位では距腿関節の安定性は低下し、背屈位では安定性が高くなる。
・背屈可動域の評価
足関節後方組織は制限因子となる事が多い。特に距骨後方の組織が硬くなると距骨の後方への滑り込みができなくなってしまう。
距骨後方組織として考えられるのは下腿三頭筋、長母指屈筋、長指屈筋、後脛骨筋などである。
また筋肉だけでなく、脂肪体(kager’s fat pad)が硬くなることもある。
これらを一つ一つストレッチや筋収縮を加え、柔軟性、滑走性を出す事が重要である。
また意外ではあるが前方組織の柔軟性が低下する事によって背屈可動域が制限される場合もある。
深く足関節背屈した際やしゃがんだ際に、足関節前方に「つまり感」が生じる場合、前方組織の柔軟性低下の可能性がある。
距骨前脂肪体は距骨前方の空間を埋める脂肪体であり、柔軟性が低下すると背屈制限因子となる。
足関節の底背屈運動において薄くなったり、厚くなったりするという特徴があり、背屈時には厚くなる。
また伸筋支帯の深層に距骨前脂肪体があり、前脛骨筋、長母指伸筋、長指伸筋の腱は伸筋支帯に固定されている。
足関節背屈時には3つの筋肉の腱部分、伸筋支帯が浮き上がり、距骨前脂肪体が厚くなるスペースを作る必要があるためにこれらの柔軟性も獲得する事は重要である。
投稿者
堀田一希
・理学療法士
理学療法士免許取得後、整形外科クリニックにて運動器疾患を中心に携わっています。
臨床では多くの患者さんの主訴が"痛み"であり、痛みを改善するために理学療法士としての基礎である解剖学・生理学・運動学を中心に評価・治療を行なっています。
今までの経験を活かして、皆様のお役に立てるように励んで参ります。