
鍼灸師・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師の方で、リハビリテーションの進め方に悩んでいる人が多いのではないだろうか?
特に、心身機能・活動・参加に配慮したリハビリテーションプログラムの作成は非常に難しいものである。
今回は心身機能・活動・参加の関係性について解説をしたい。
「心身機能・構造」に働きかけることで、患者の筋力や関節可動域が改善し、歩行能力が獲得されたとしても、「活動」や「参加」が低水準な状態では、引きこもりや廃用症候群が進行するかもしれない。
一方で、「心身機能・構造」へのリハビリに消極的な人が「活動」や「参加」を促すことで、社会的役割への意欲や興味が向上し、「心身機能・構造」へのリハビリの必要性を認識するかもしれない。
つまり、リハビリでは「心身機能・構造」、「活動」、「参加」へバランスよく働きかけ、相互作用による効果を得ることが重要になる。
介護保険制度の基本理念が「自立支援」である以上、リハビリはその理念達成のために存在しなければならない。
本来、「リハビリテーション」の意味は全人間的復権であり、その方の生活、ひいては人生におけるQuality Of Lifeを支援していくものである。
しかし、一方で心身機能の評価や介入が未熟なセラピストに限り、「活動」「参加」が重要だと異常に訴える事例が散見することがある。
自身の理学療法・作業療法・言語聴覚療法が未熟なことで、患者や利用者の基本動作能力・応用的動作能力・言語聴覚機能が回復しないことに気づいていないセラピストは残念ながら存在する。
そういったセラピストが、十分に患者や利用者の心身機能のポテンシャルを引き出してない中で、「活動」と「参加」に傾注することは、患者や利用者にとっては不利益であることも事実である。
心身機能・活動・参加のバランスの良い取り組みが出来ない原因としてセラピストと利用者の間に存在する「情報の非対称性」が挙げられる(上図)。
情報の非対称性とは「保有する情報に差がある時に生まれる不均等な情報構造の事」を言う。
つまり、利用者はセラピストより心身機能・活動・参加に関する詳細な知識や情報を有していないため、サービス提供者の言いなりになる傾向がある。
例えば、作業療法士が、「あなたの心身機能はもうこれ以上回復しないので、自宅では歩行器を使って歩きましょう」と説明すると、「心身機能がこれ以上回復しない」ことを判断する知識や情報を利用者は有していないため、作業療法士の説明に従う可能性が高い。
しかし、心身機能の評価や介入に長けた作業療法士その利用者を診れば、「十分に自立歩行を目指せる」と評価する可能性もある。
「活動」・「参加」はリハビリテーション上の目標であり、人が自分らしく生きていくために必要な概念である。
しかし、心身機能の向上の追求なしに、「活動」「参加」という表面的な概念だけを妄信的に追いかけていくことは、リハビリテーションの概念にも反する。
セラピストは、他職種と比較して医学的側面から心身機能を評価できる能力を持っており、その能力を活かして、「活動」・「参加」を客観的に冷静に評価・介入することが可能である。
特に、心身機能の適切な評価が出来れば予後予測が可能となり、予後に合わせた活動・参加を提案できることは最大の強みだと言える。
投稿者
高木綾一
株式会社WorkShift 代表取締役
茂澤メディカルクリニック
たでいけ至福の園
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授
過去に3つの鍼灸院の経営や運営に携わり、鍼灸師によるリハビリテーションサービスを展開していた。また、デーサービスも立ち上げ、鍼灸師・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師による機能訓練やリハビリテーションを利用者に提供していた。鍼灸師・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師の方々への教育や指導経験が豊富である。現在も、全国各地でリハビリテーションに関するセミナー講師として活動している。