
いわゆる身体や関節が硬い患者に対して、鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師・柔道整復師もストレッチングを用いて治療をしたり、あるいはストレッチングの指導をする機会があると思う。
では、そのストレッチングの種類やメカニズムについて熟知しているであろうか。
本投稿において、この2点を中心に解説を行い、鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師・柔道整復師の臨床に活かしていただきたいと思う。
ストレッチングの種類については、動きの有無で大別するのが一般的であろう。
すなわち、ストレッチング中に反動や弾みをつけずにゆっくりと筋を伸張するスタティック(静的)ストレッチングと、反動を利用して筋を伸張するバリスティックストレッチングである。
その他、相反神経抑制を利用したダイナミックストレッチングや応用的なストレッチングとしてPNFストレッチング等もある(表)。
また、余談にはなるが単純にストレッチングを行う人数で分類することもある。
つまり、ストレッチングを自分自身で行う場合はセルフストレッチング、セラピストやトレーナーといった自分以外の人に行ってもらう場合はパートナーストレッチングという。
では、上記したストレッチングの種類において、ストレッチングの代表でもあるスタティックストレッチングとダイナミックストレッチングのメカニズムについて解説をしていく。
骨格筋は腱を介して骨に付着するが、その腱や骨格筋の結合組織には、ゴルジ腱器官が存在している。
このゴルジ腱器官は、Ib群求心線維の終末を形成している。
また、ゴルジ腱器官は骨格筋に対して直列に配列されていることから、筋が伸張されたり収縮したりすることによって伸展されるのである。
すなわち、スタティックストレッチングにて関節運動の最終域で持続的に筋が伸張されることにより、Ib群求心性線維は同名筋の運動線維を反射性に抑制させるのである。
これを自原抑制またはIb抑制と呼び、スタティックストレッチングにて筋が伸張され、関節可動域が拡大するメカニズムである。
また筋は、相反神経支配といって拮抗する筋からの神経的な影響も受けている。
もっと単純に述べると、主動筋が収縮する際には、拮抗筋は弛緩するということである。
このメカニズムを神経学的にみると、拮抗する2つの筋の一方が興奮すると、もう一方の筋を抑制する神経機構であるIa群求心性線維の興奮は、脊髄内にて抑制性の介在ニューロンを介して拮抗筋の運動神経を抑制するのである。
これを相反抑制またはIa抑制と呼び、ダイナミックストレッチングのメカニズムとなる。
具体例を挙げると、ハムストリングスをストレッチングしたい場合、膝関節伸展運動を行い大腿四頭筋を収縮させることで、ハムストリングスは相反抑制がかかり弛緩するのである。
以上がスタティックストレッチングとダイナミックストレッチングの神経学的なメカニズムである。
鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師・柔道整復師の先生方にとって有益な情報になったであろうか。
今後もリハビリテーションに関する様々な内容の投稿をさせていただくので、参考にしていただければと思う。
投稿者
井上拓也
・理学療法士
・認定理学療法士(循環)
・3学会合同呼吸療法認定士
・心臓リハビリテーション指導
理学療法士免許を取得後、総合病院にて運動器疾患や中枢神経疾患、訪問リハビリテーション等に関わってきました。すべての患者さんのために、障害された機能の改善やADLの向上に励んできました。特に運動器疾患においては、痛みの改善や関節可動域の改善、筋力向上を目的とした理学療法にて、患者さんのADLの向上を図ってきました。
今までの経験を活かして、皆様のお役に立てるように励んで参ります。