ストレッチングを考える その1 ストレッチングの効果

本投稿にて、鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師・柔道整復師の先生方と改めて『ストレッチング(stretching)』について一緒に考える機会を設けさせていただこうと思う。

まずストレッチとは、あるモノに対して伸張を加えることをいい、医療現場やスポーツ現場の治療場面では“ストレッチング”と呼ばれ、ある筋肉に対して伸張を加えることを指す。

臨床の場面において、ストレッチングの使用頻度は最も多いかと思われる。

したがって、理学療法士のみならず鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師・柔道整復師においても基本中の基本の手技ではないだろうか。

そのストレッチングの効果としては、関節可動域(以下、ROM)の改善、筋緊張の低下、疲労回復、血流増加等があり、障害予防や運動のパフォーマンスの向上も期待できるといわれている。

また、近年ではバスキュラー・ストレッチという概念も提唱され始めている。

これは、ストレッチングをすると筋だけでなく血管も伸張されるため、伸張部位の血液循環や血管拡張能、および動脈伸展性が改善するというものである。

したがって、ストレッチングの使用頻度が高い所以としては、こういった汎用性の高さが背景にあると考えられる。

一方で汎用性が高い故に、臨床では「とりあえずストレッチング」になってはいないだろうか。

誰彼構わず、筋の伸張性も評価せず、とりあえず大腿四頭筋のストレッチングやとりあえずハムストリングスのストレッチング、とりあえず腓腹筋のストレッチング等々を実施していないだろうか。

とりあえずストレッチングを行わないために、ストレッチングを実施する際には、当然のごとく“筋の伸張性が低下している”という評価を行ってほしい。

そのために、ROMテストや触診、special test(特殊テスト)などを行い、筋の伸張性が低下していることを問題点として挙げる必要がある。

例えば、ROMテストにおいて、関節を他動的に運動させたときに感じる抵抗感や最終域付近での抵抗感(end feel)を感じながらテストを進める。

その上で、tissue stretch(軟部組織伸張感)な抵抗感・end feelを感じた際は、筋の伸張性が低下している可能性が高いため、ストレッチングの適応となるのである。

またspecial testでは、腸腰筋の伸張性低下を評価するThomas test(トーマステスト)や大腿四頭筋の伸張性低下を評価するEly test(エリーテスト)、ハムストリングスの伸張性低下を評価するSLR(straight leg raising) テストが代表的であろう。

これらのテストが陽性であった場合に、ストレッチングが適応になる。

このようにいくつかの評価を統合した結果、ストレッチングを実施することで、上記のストレッチングの治療効果がより明確になると考える。

投稿者
井上拓也

・理学療法士
・認定理学療法士(循環)
・3学会合同呼吸療法認定士
・心臓リハビリテーション指導

理学療法士免許を取得後、総合病院にて運動器疾患や中枢神経疾患、訪問リハビリテーション等に関わってきました。すべての患者さんのために、障害された機能の改善やADLの向上に励んできました。特に運動器疾患においては、痛みの改善や関節可動域の改善、筋力向上を目的とした理学療法にて、患者さんのADLの向上を図ってきました。
今までの経験を活かして、皆様のお役に立てるように励んで参ります。

 

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