
「息切れがする」
「動くとしんどい」
「寝ると苦しくなる」
などの症状を訴える高齢者の方は多いのではないだろうか?
このような症状を聞くと鍼灸師、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師の方はどのような疾患を想像されるだろうか?
このような息が苦しくなる、動くと苦しいという状態では、「呼吸器疾患」もしくは「心疾患」の発症、もしくは増悪を予測してほしい。
実は、呼吸器疾患の増悪は心臓にも悪影響を与え、また、心疾患の増悪は呼吸器にも悪影響を与える。
この作用により、先述した「息切れがする」、「動くとしんどい」、「寝ると苦しくなる」という症状が発現する。
呼吸器疾患の悪化による心臓への影響
まず、呼吸器疾患が増悪すると交感神経が亢進し、全身に酸素を回そうとするため、心臓の拍動が早くなる。
心臓の拍動が早くなるため、固有心筋への負担が増加し、その結果、狭心症のリスクを高めることになる。
また、呼吸器疾患により、動脈血酸素飽和度が低下すると肺胞を取り巻いている血管が攣縮し、肺への血流が不十分となる。
その結果、右心室へ血流が逆流することや、左心房へ十分な血流を送ることができなくなり、右心不全および左心不全の症状を誘発してしまう。
心疾患の悪化による呼吸器への影響
左心房・左心室の不全により全身へ血液を送るポンプ作用が低下すると、血液の滞留し、左心房の上流である肺に血液がうっ滞しやすくなる。
肺の血液うっ滞量が増加すると、血管より血液の水成分が染み出て、肺の実質・間質にたまっていくという肺水腫という状態となる。
肺の中に水がたまると、肺胞と血管における酸素の移動が阻害される拡散障害生じるため、結果的に動脈血酸素飽和度が低下することになる。
また、肺水腫がより増悪すると気管支に水分が染み出て咳嗽が生じ、より呼吸困難を感じるようになる。
このように呼吸器と循環器は密接な関係(図)となっている。
このような理由から呼吸困難を訴える高齢者に対しては、呼吸器と循環器のアセスメントが必要となる。
投稿者
高木綾一
株式会社WorkShift 代表取締役
あずま整形外科リハビリテーションクリニック
茂澤メディカルクリニック
たでいけ至福の園
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授
過去に3つの鍼灸院の経営や運営に携わり、鍼灸師によるリハビリテーションサービスを展開していた。また、デーサービスも立ち上げ、鍼灸師・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師による機能訓練やリハビリテーションを利用者に提供していた。鍼灸師・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師の方々への教育や指導経験が豊富である。現在も、全国各地でリハビリテーションに関するセミナー講師として活動している。