
鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師・柔道整復師の先生方に対して、『運動学習』での重要な要素である内的フィードバック(feed back:以下、FB)と治療者のFB(外的FB)について投稿させていただくことにする。
ご存知の先生方も多いと思われるが、FBとは「ある出力(ここでは運動や行動など)の結果を評価し、その評価した結果を伝え返すこと」をいう。
そして内的FBとは、運動した本人(臨床においては患者)の動いている身体各部からの感覚入力(主に運動覚や位置覚)や、視覚入力を受けて行われるFBのことである。
この内的FBの機能としては、1つは運動遂行中の手がかりになることで運動制御(コントロール)に役立つこと、もう1つは運動後にその運動を改善(修正)するために有益な情報となることである。
例えばピッチング動作の場合、ピッチング動作中は自身が意図したところへボールが投げられるように、上肢の感覚入力にて上肢をコントロールすることでピッチングという動作を行うのである。
そしてピッチング後は、ピッチング中の微妙な上肢の軌道を修正するために、また感覚入力を用いるのである。
このような内的FBを用いた、理想となる目標(運動)とその誤差の修正を繰り返しながら行う運動学習のことを誤差学習といい、主に小脳の働きによって行われている。
話は逸れるが、小脳障害ではこのような感覚入力を用いた内的FBでの運動制御が障害されるために、企図振戦や酩酊様歩行といった小脳失調が生じるのである。
また外的FBとは、運動した本人の感覚入力から得るものではなく、運動中や運動後において指導者(臨床においては治療者)から得られるFB(アドバイス・助言)のことをいう。
スポーツ経験のある先生方は、指導者からのアドバイスが自身の技術の向上に役立ったことを経験されたことがあるかと思われる。
すなわち、外的FBは患者に与えることで内的FBを増強させ、運動学習の向上に繋がるのである。
野球でいうピッチングコーチやバッティングコーチがいるのも、このためであると思われる。
しかしながら、むやみやたらに外的FBを与えればいいわけではなく、外的FBと運動学習には以下のような関係性がある。
つまり、外的FBを1試行ごとに与える、各試行ごとに運動と同時にあるいは運動終了後に与える、正誤を伝えるのではなく誤りの方向や程度(悪いフォーム、非効率的なパフォーマンス等)を知らせるといったことで、運動学習の効率が増加する。
鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師・柔道整復師の先生方においても、患者に運動指導を行う場合には、こういった外的FBを有効的に利用し運動学習の理論に基づき指導することをお勧めする。
投稿者
井上拓也
・理学療法士
・認定理学療法士(循環)
・3学会合同呼吸療法認定士
・心臓リハビリテーション指導
理学療法士免許を取得後、総合病院にて運動器疾患や中枢神経疾患、訪問リハビリテーション等に関わってきました。すべての患者さんのために、障害された機能の改善やADLの向上に励んできました。特に運動器疾患においては、痛みの改善や関節可動域の改善、筋力向上を目的とした理学療法にて、患者さんのADLの向上を図ってきました。
今までの経験を活かして、皆様のお役に立てるように励んで参ります。