
慢性期の利用者や家族は急性期や回復期と異なり、生活や人生における目標を失っている傾向がある。
急性期であれば病気を治すこと、回復期であればADLを改善することなどのより具体的な目標があるが、慢性期の場合、症状に変化が乏しいこと、生活が介護者に依存していること、病気や心身機能の低下に不安を感じていることなどの理由から具体的な目標設定が困難になっている。
そのため、柔道整復師、鍼灸師、あん摩マッサージ指圧師の方で、高齢者のリハビリテーションは難しいと感じている人がいいのではないだろうか?
特別養護老人ホーム、デイサービス、在宅の利用者の中には、特段、目標がないためリハビリテーションに対して意欲が低い人がいる。
このような方に対してどのように対応をすれば良いのだろうか?
その一つが「目標設定」である。
利用者のリハビリテションやケアを通じて、「どのようなあるべき姿」を目指すのか?を決めることが目標設定である。
リハビリテーションでは「利用者の目標設定」が欠かせない。
なぜならば、利用者の目標が明確でない状況では、利用者本人、家族、関わる専門職や関係者のモチベーションを上げることが難しいからである。
目標とモチベーションの関係は、ロックの目標設定理論から次のように説明できる。
1)やや困難な目標
やや困難な目標の方がより高いパフォーマンスを出す。
目標を実現する上で工夫や努力が必要な方が個人の学習意欲が高まる。
あまりに簡単な目標は個人のモチベーションを向上させない。
例えば、歩行が安定している利用者に屋内の移動を目標にリハビリテーションを提供しても、目標設定が低いためモチベーションは上がらない。
それよりも、犬の散歩などの目標設定にすることで、目標達成のために利用者も専門職も創意工夫をしなければならないというモチベーションが生じる。
2)明確な目標
明確で具体性を持った目標は曖昧な目標より高いモチベーションを生じやすい。
例えば、「歩けるようになりましょう」という目標より、「近所のコンビニエンスストアと家の往復が出来るようになりましょう」という目標の方がモチベーションは生じやすい。
なぜならば、何のための目標なのか、この目標の意義はどのようなものなのかを理解しやすいからである。
目標を設定することができれば、リハビリテーションは大きく進展していると考えられる。
なぜならば、利用者が目標を受容することができれば、非常にリハビリテーションに前向きになってると言え、大きな成果が期待できるからである。
柔道整復師、鍼灸師、あん摩マッサージ指圧師の方は、ぜひ、目標設定について再度検討をしていただきたい。
投稿者
高木綾一
株式会社WorkShift 代表取締役
あずま整形外科リハビリテーションクリニック
茂澤メディカルクリニック
たでいけ至福の園
国家資格キャリアコンサルタント
リハビリテーション部門コンサルタント
医療・介護コンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)(脳卒中)
呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授
過去に3つの鍼灸院の経営や運営に携わり、鍼灸師によるリハビリテーションサービスを展開していた。また、デーサービスも立ち上げ、鍼灸師・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師による機能訓練やリハビリテーションを利用者に提供していた。鍼灸師・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師の方々への教育や指導経験が豊富である。現在も、全国各地でリハビリテーションに関するセミナー講師として活動している。