鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師・柔道整復師の皆さんは、施術中に患者が最悪の事態になることを想定して治療にあたっているであろうか。
最悪の事態というのは、患者の突然の意識喪失や呼吸・心停止といった死に直結する状態のことである。
こういった場合、医療従事者としては、一次救命処置(以下、BLS)を迷うことなく実施できるようにしておく必要がある。
我々、国家資格を保持する理学療法士は、そういった場面に遭遇すると、医師や看護師に次いで率先してBLSを実施しなければ、最悪の場合は法的措置をとられる可能性もある。
また、近年は、公共施設のいたるところにAED(自動体外式除細動器)が設置されているため、医療従事者でなく一般の方でもAEDの操作を含むBLSが実施できるように勧められている。
さて、そのBLSであるが、AHA(America Heart Association)による成人に対するアルゴリズムが設定されており、そのアルゴリズムの手順に従って進めていくことが推奨されている。
以下、そのアルゴリズムについて記述する。
傷病者の発見に始まり、
- 周囲の安全確保(傷病者および自身の安全の確保が重要)
- 傷病者の反応の確認(傷病者の肩を軽く叩き、大声で「大丈夫ですか」等の声掛けを行う)
傷病者に反応がない場合、大声で周囲の方に助けを求める
状況に適した方法で救急要請を行う
AEDおよび救急治療用器材を取ってくる(または、誰かに依頼し、取ってきてもらう)
- 呼吸と脈拍を評価する(呼吸の確認後に、頸動脈の拍動を触知する)
・a.呼吸は正常、脈拍あり→救急隊員が到着するまで注意深く経過観察
・b.正常な呼吸なし、脈拍あり→人工呼吸を実施(5~6秒ごとに1回(10~12回/分))
・c.呼吸なし・正常な呼吸でない、脈拍がない→ただちに4.心肺蘇生法(以下、CPR)
- CPRの実施(胸骨圧迫30回と人工呼吸2回のサイクル)
・胸骨圧迫→①圧迫のテンポは100~120回/分、②圧迫は約5cm(5cm圧迫しないと心臓まで圧迫が届かない)、③圧迫を行う度に胸郭を完全に元に戻す、④胸骨圧迫の中断は最小限
・人工呼吸→①1回の人口呼吸は1秒かけて行う、②人工呼吸1回毎に胸部の上りを確認する、③10秒以内に胸骨圧迫を再開する
- AED到着(AEDが利用可能になり次第、ただちに使用する)
以上がAHAによるアルゴリズムである。
5.以降のAED使用時の注意事項は省略したが、鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師・柔道整復師の先生方には、1~4.の手順については熟知した上で実行できるようにしてもらいたい。
筆者も今年BLSの更新(2年に1回更新)があるので、最新の知識とスキルをもって日々の臨床における最悪の事態に備えたいと思う。
投稿者
・理学療法士
・認定理学療法士(循環)
・3学会合同呼吸療法認定士
・心臓リハビリテーション指導
理学療法士免許を取得後、総合病院にて運動器疾患や中枢神経疾患、訪問リハビリテーション等に関わってきました。すべての患者さんのために、障害された機能の改善やADLの向上に励んできました。特に運動器疾患においては、痛みの改善や関節可動域の改善、筋力向上を目的とした理学療法にて、患者さんのADLの向上を図ってきました。
今までの経験を活かして、皆様のお役に立てるように励んで参ります。